四郎は笊に乗った葱と対峙している。
実に立派な白葱である。
父からの賜り物だが、さて……。
(何に使えと仰せか)
昨晩は父に抱かれた。これでもかというくらい激しく突かれ、喘ぎに喘いで、散々に噴き散らした分の精を穴に注がれた。
四郎は枕に頭を預けて、見るしかない姿勢で目の前の一部始終を眺めさせられた。抜かれると穴の嘔吐きは凄まじく、開きっ放しの黒い穴から流れ出る信玄の精に、体の中まで所有権が誰にあるのか教え込まれる。腰を目一杯前に捲られている四郎の陰嚢や陰茎にまで伝い落ちていく。穴まで射精した様だった。
穴を違うものにされた、と思った。
「葱……」
夜陰の灯に浮かぶ葉鞘の白さが眩しい。今宵、父は来ない。
次に父が訪れた時、開口一番告げることは決まっている。
「父上。先日のお心遣い感謝致しまする」
五日が経っていた。信玄は思い当たる節を探して「ああ、葱か」と呟いた。
「して、効いたか」
「は……。その……」
四郎は珍しく口籠ってから「一本では足りませぬ」と答えた。
「何?あれは一本で充分……」
言いかけた信玄は団栗眼を丸くして、伏せた目を逸らしている四郎の顔を見つめた。信玄ですら心を読むのが難しい不変の表情からは使ってみた感想など伺い得るはずもない。尋ねるのも不粋、というか聞けない。
(使い方を知らなんだか)
衆道を嗜む者の間では、葱は性交の後、尻に挟んで肛門の腫れを引かせる為に使うのである。あまりにも酷く責めてしまったから心配になって寄越したのに、まあ、挟むより効いたやもしれんが……。
「そうか。如何ほどあれば見合うかのう」
突っ込む奴があるか、と言えない優しさを誘われ、首を傾げて顔を覗いた。
四郎は長い睫毛を瞬かせてから、目玉を上向きに動かした。そんな真剣に考えんでも。
「三本あれば……」
おいおい、ちょっと待たんか。大層立派な白葱だったはずだが……。三本分だとわしの一物より太いぞ。
「葱三本か」
妙な間が出来た。
四郎の喉が音も立てず息を呑んだのを信玄は目撃した。
「いかん。いかんぞ、四郎。今後そなたは葱禁止。葱禁じゃ。よいな」
四郎はいきなり押し倒された。
「三本ぶち込むより善がらせてやろう」
真顔で言うのでまたしても四郎の喉が静かに鳴った。
結局この先も葱の正しい使い方を知らないまま過ごした。
20250105