猟犬に追い回される獲物の気持ちがよく解った、人生二度目の絶賛逃走中に門倉は何の得にもならない悟りを得た。振り返る余裕などないが、暗闇の中を、刃渡り四十糎の三十年式銃剣を右手に精々と追走している顔見知りの歩兵が、想像の内に顕然と姿を見せては無駄に恐怖を掻き立てて、網走監獄の囚人の方が優だとさえ思えた。
門倉も歩兵も網走監獄では看守側の立場だったのだが、当時新入りだった歩兵が実は第七師団隷下の歩兵第27聯隊所属の間諜で、部長の門倉が典獄に始末を命じられて秘密裏に囚人を二人刺客として差し向けたのが縁の始まりと言っていい。それまでは大した付き合いもなく、頬に左右対称の黒子がある以外は特に印象の残らない純朴そうな田舎の青年としか覚えていなかったのに、刺客を金槌で滅多打ちに易易と撲殺してしまうとんでもない野郎だったのだ。
「門倉部長~。待ってくださーい」
暢気な声が緊張感と不釣合で気味が悪い。待つわけない。そもそも追い掛けたいから逃がしたくせに待ってくれとはどういう料簡だ。こんな茶番に付き合う義理はないはずだが、銃剣を突きつけられ、皮を剥ぐと脅されて逆らう門倉ではなかった。でも小花柄の着物と白足袋と頬冠を「これを着てください」と何だか弾む調子で押しつけられた時に、あの忘れたい札幌の夜が、間違えて打ち上げた合図の花火と鮮やかに記憶に咲いて、照らされた顔の皴を浮き彫りにした。
何故か草履はなかった「どうせまた何もない所で蹴躓いて転けるでしょ?」納得した「相場の倍払いますから、女みたいに叫びながら」何の商売だ「嫌がられると興奮するんですよねー僕」走るだけで精一杯ですのでお客様の御要望にはお応え出来ません、ざまァみろ。
必死に逃げる門倉を嘲笑う様に遥か頭上では雲が悠々と流れて時折観覧席を月に譲り、女装したおっさんと頬の黒子に棒人間の落書きを施した兵隊さんの鬼ごっこを曝したり隠したり。
碁盤状に区画された街の、目端に散見く屋並には馴染みがある様な気がするのに、全く土地勘が掴めない。幾度も辻に遭遇する度、左へ右へ時々真直ぐ追跡者を撒こうと試みながら、同じ道を周周しているばかりな気がしないでもない。駆け抜けた舗装路の左側に、赤煉瓦の壁を弓形状に刳貫いた木扉の門が、屋根の丸い円柱の出っ張りを両脇に抱えて聳えている……あれは……いやまさか、そんな馬鹿な。何かの工場に決まってる。
止せばいいのに気になって堪らずに余所見をしてしまったら、急に足元に傾斜を覚えた。あれ?と思った時には立て直せないくらい体が全身が左側に倒れて、茂みの中を転がっていた。
体を擲った下は少し湿った土である。離れた左の方で心洗われる様な水の流れが聞こえて、目の前に筋交いをした立派な橋脚が音の方向に並んでいる。どうやら橋の袂近くで土手から転げ落ちたらしい。宇佐美は……追って来る気配がない。
哀しいかな、中年男の体力は殆ど蒸発しきっていた。息と汗の熟れが酷くて、命の危険があるというのに一旦休んでしまうともう立つのが面倒臭い。門倉は鈍々と肘と膝を起こして四つん這いになり、月明りから隠れる様に、揺るぎない影の蟠る橋桁の下を目指した。
頭に影の傘が差した。やっと辿り着いた。はーっと溜息を逃がしたのも束の間、右の短袴の裾、肌が剥き出しになっている脹脛の下辺りに重い物が落ちてきて「痛ッ!」という叫びと一緒に今度はうっかり心臓まで逃がしてしまいそうになった。恐る恐る右の二の腕越しに下脚を覗くと、釦留めの麻脚絆を纏った編上靴が踏んづけている。
「うふ……。捕まっちゃいましたね?」
視線が搗ち合うのが恐ろしいので物言わぬ橋脚に戻した。少しでも逃げようとする素振りを見せたら何されるか判ったもんでは、と思ったから石の様に固まっていたのにいきなり飛んでるエゾモモンガになって全身を被せてきた。
「ヒィィ!もう勘弁してくれ」
「しませーん。いいからじっとして」
銃剣を顔の前に突き立てられ、慄いていた表情と金玉が思わず毅然と青褪めた門倉の後ろで、軍衣の釦を三つまで外して、釦穴の裏側の内物入から包んだ飴の様な寸法の、小さな油紙の包みを取り出した。紙を除いて現れた丸い小皿の底の練口紅を人差し指の頭で一擦りすると、皿はその辺に放置って、右から門倉の顔を覗き込み、左手で下頬から顎の辺りを鷲掴みにして自分の顔と向き合う様に捻る。年中乾いた唇の下と上を指頭で擦って紅を移す。門倉の視線は違う方向に戦いでいる。
「やっぱり紅を差すとそれっぽい雰囲気がしていいなぁ」
うん。傍から見ても、襯衣と下袴に女物を襲ねて半幅帯を一巻き後ろで適当に蝶結びにした雑な女装のおっさんなのだが、どう見ても狸爺と狸婆の合体したお道化た風情なのだが、こういう私娼は普通にいるものだ。牛山も言っていたではないか「こないだ抱いた娼婦にそっくりだ」と。
「もう逃げないんですか?つまんないな~。抵抗しない相手にお仕置きなんて……。抵抗してくれなきゃお仕置きしますよ?」
「俺にはお仕置きされる以外の選択肢ないのか!?」
「選択肢ぃ~?フン、何言ってるんですか門倉部長のくせに」
喜んでるんだか怒ってるんだか判別し難い昂奮気味の顔をして銃剣を引っこ抜き、鷲掴みにした帯の結び目の脇に刃を入れる。布を裂く音が各々の気分に拍車を掛け、門倉の下り方面と反対に宇佐美は上り方面へ向かう。帯を落とすと用が済んだ銃剣を左手に持ち替えて脇に突き立てる。下腹に両手が回って革帯の尾錠を外そうとしている。止めろ!と言いたくなったが喜ばせるだけであろう。止めないで!と言っても同じことだから、下袴の留金と前釦まで外されても黙っているしかない。しかし着物を捲り上げ下袴を引き摺り下ろされ、冷えた外気の直触りと荒っぽい息遣いが甚だ不安になってきたので肘で前へそろりと躙った。宇佐美はすかさず両膝の裏に摚と自分の尻を乗せた。剥いた尻には引っ叩きながら「門倉部長のくせに生意気な!」と罵声を浴びせる。脚を繁叩かせるが怯ともしない。執濃く激しく叩叩やられて尻は腫れ、痛みに耐えられなくなってきた。
「だーもう!痛ぇんだよ!ちったぁ手加減しろこの変態野郎!!」
遂に怒鳴ってしまうと平手打ちの嵐がピタリと止んだ。膝の裏も弗と軽くなる。肘と膝の関節の痛みを堪えて一歩前へ躄ったが、急に大人しくなった宇佐美が何だか怖くなってそーっと顧みてみると、銃剣を逆手に持ち、殺意を弄んでいる様な哂いを浮かべてこっちを俯瞰していた。防御本能が働いて思わず体の前を相手に向けて後退る姿勢をとるも、手足に力が入らず、社会的距離なんぞ到底望める状態ではなかった。
「変態って、僕がですか?嫌だなぁ~門倉部長のくせに……。男を喜ばせる商売してる男の分際でこのアバズレ!!」
撥!!!「痛!!」張り飛ばされた左の頬を無意識に手で庇う。そういえば看守を辞めた後は男娼に身を窶して糊口を凌いできたものと勘違いされ「おいたわしや!!」とかめっちゃ嬉しそうな顔して憐れんでいたのを思い出した。
「誤解だ!!札幌の時は必要に迫られて女装してただけだ、ただの囮だって!」
違う違うと両腕を前に忙しない手振りをしてみせたら「黙れこのアバズレ!!」撥!!!「痛!!」続いて胸を強か突き飛ばされ、地面に後頭部を強か殴られ、悶える暇もなく顎の下に刃を宛行われる。
「ヒッ……!!やめてッ、もうアバズレでも何でもいいから!!」
「このアバズレ!!」
撥!!!「痛!!」なんか理不尽!アバズレ呼ばわりが余程気に入ったのか、アバズレアバズレ言いながら順手と逆手を振子にして左右の頬を打ってくる。
「先輩がこんなッ!アバズレにッ!なっちゃってッ!ハァハァ!!」
アバズレって言いたいからアバスレ扱いするのでは、と思わんでもないが、そんなことより顔が痛い。言葉を区切る毎に打つから。
「門倉部長を!買うなんて!僕はッ!ハァハァ!!」
「金払ってねえだろっ……」
「ハァハァ……!!んもう!うるっさいなあ!そんなの後でいいでしょ!」
門倉の左耳の真横に銃剣が突き下ろされ、土を抉る音が鼓膜を震え上がらせた。そんな勢いで刺されたら生きてる自信ない。軍衣の残り二つの釦を外す手が凄く苛々している。
紅皿を忍ばせていた内物入を右手で漁り、今度は透明の小瓶をさっと取り出した。えっなんで?前全部開ける必要あった?今。
「これ飲んでちょっと黙っててくれます?」
蓋を捻って顔を腫らした門倉の口に瓶の口を填める。半分にも満たない量の水らしき液体に勢い喉を叩戸され、つい迎え入れてしまった後で、招かれざる客の正体を推察して狼狽える。だってもう毒しか思いつかないのだ。なんせ宇佐美は水と嘘ついて毒しか恵まない様な性分してるし、いやこいつ自体が毒だったわ、絡まれた俺はとっくに死に体になってる。
「大丈夫ですってば、死にはしませんって。お酒みたいなもんだから」
表情から察した恟恟を和らげようと説明してくれるのは有難いのだが、如何せん中途半端である。彼の言葉を信じるなら死ぬ心配はないらしいが、そのうち生き地獄を蜿打ち回る羽目になるかもしれない。毒薬の摂取は一度だけ、尊敬する人の為に命を賭けたが、苦しくて堪らず早く楽になりたいが為に更に違う毒薬で死を煽ったぐらいだ(で、二種類の毒薬の間に相殺効果が働き、毒性が綺麗爽然帳消しになるという信じられない落所が付いて今も生きている)。
お酒“みたいなもん”とは一体……。
悶々と心当たりを巡らせながら、先刻から気が散って仕方ない。
「…………。さっきから何してんだ?」
集中力を妨げる股間の圧迫。右の膝頭で下帯の前をぐッ、ぐッ、と直押しに責められているというのに熟練の按摩に凝った箇所の指圧を受けている感じで、痛くならないのがどうも不思議である。体の部位でも敏感な顔や尻に平手打ちを喰らいまくったので、痛覚が働くのに飽きてしまったのだろうか。特に敏感なところを苛められるのも、平常運転でない感覚にも、嫌な予感しかしないけども……。
「アバズレが本番しないで済まそうったってそうはいかないぞ」
「何、本番て!!」
「またまたぁ、アバズレのくせに純情ぶっちゃって……」
膝頭でぐりぐり捏ねられる。いくら構って貰ったところで宇佐美が相手じゃ好奇心より恐怖が勝って天岩戸から天照大御神も出て来れやしないだろうから、委縮して下帯に閉じ籠もっている俺のチンポ如きは言わずもがな、男に脅されて勃ったとあっては股間の沽券に関わる一大事、本番も店番も真っ平御免だ。
橋桁の庇陰が上縁を掠める視界に星が大きく激しく瞬いて花火を眺める様な錯覚、月が異様に冴えて辺りを白く輝かせ、天照大御神が御座したと感激している最中、宇佐美の両頬の黒子頭の棒人間達が顔から飛び出して、手足を目一杯振りながら、縮まらない距離を走っている。目に入ってくる全てに揺れが生じて地震を疑うも、後頭部を左に右にと忙しなく土に擦りつけている自分に気がついた。とにかく凝としていられないのだ。気分は躁として、銃剣で刺されようが毒を飲まされようが、今なら死なないのではないかと思えてくる。そういう変調が時間を経るにつれて酷くなってきた。
「ほーら勃ってきた……よしよし。二階堂の薬はよく効くなー」
何が?寝起きの顔をして少し頭を擡げると、豪雪にも負けない力強い蕗薹の様な芽吹きが下帯の盛り上がりに映っている。
「う、嘘だろ!?なんでだよ!?」
「ああ、疲労回復するって聞きましたけど?走った後だからちょうどいいでしょ?」
等閑に答えながら天岩戸の扉ならぬ盛梱下帯の布端をぐいと横に退けると、寝た子を起こして喜ぶ宇佐美の期待を裏切らない半勃ち具合であった。手にした銃剣の面でピタピタ叩かれ門倉の腰は竦み上がったが、意に反して肉棒は孵化する蝉の様に色濃く形も定まってきた……ピタピタ、ピタピタ、ピタピタ、ピタピタ、ピタピタ、ピタピタ、ピタピタ、チンポを玩具に遊んでいる宇佐美はとても楽しそうだ。ピタピタ、ピタピタ、ピタピタ、ピタピタ、弄ばれるチンポの遣る瀬なさよ。ピタピタ、ピタピタ、ピタピタ、ピタピタ、ピタピタ。
「うわ、すごっ。宇佐美上等兵に敬礼!なーんてね、アハッ」
「うおおお!!俺のアマテラスぅぅ!!」
天照大御神といったら神様の中でいちばん偉いのに、上官を前にした下士官みたいに直立不動の姿勢をとっている。平素からシャキッとしない門倉には別の生き物を見る心地ながら、チンポの裏切りを始末したくて疼いてきた。全裸になって市中引廻しの刑に処したい衝動を滾らせながら徐ろに手を伸ばすと、刃先が手首に照準を合わせた。
「随分と辛そうですねえ。僕が今、楽にしてあげますから、ちょっと待ってて……」
言葉では労わりながら、やっぱり顔は嬉しそうである。革帯を外して軍袴の前を開ける一連の仕草を見た時の門倉の顔色の悪さときたらなかった。そして下帯の脇から少し昂奮気味ながら標準寸法の棒を取り出して扱き始めた時、門倉は終わりの始まりを見たと思った。
「……なんで勃たそうとしてんの?何に使う気?ねえ」
「黙っててハァハァ!気が散る!口にチンポ突っ込みましょうか!?」
効果覿面の箝口令であった。乱れた息に包まれた「ァ!」という小さな喘叫と、皮膚を擦り合わせる音と、心洗われるはずの川の流れの背景音との相乗効果がえげつない。
門倉が今最も危惧しているのは命の保障よりもケツの貞操であった。囚人の身体検査で数え切れない肛門を人目に晒してきた看守時代の業にしても(いや指突っ込んだこともあったけど)、チンポで報いられるなんてちょっと深過ぎやしないか?
などど吾身の人生を悲観している間に、宇佐美の凶器は重力に逆らい頭が瑩瑩してきて、容赦なく終わりが近づいてくる。
「フー。よし、もうこれぐらいにしておこう」
右手に棒を握ったまま、銃剣を握った左手を地につけて上体を支え、門倉の引攣った顔を覗き込む。ケツに挟まる縦廻しを引っ張られ、チンポの先で割れ目を緩緩と舐め上げられる感触に、首を振振手足を旗旗、いい歳したおっさんが駄々っ子になって喚く。星の野次馬が騒めいて煌煌する中、月は見苦しいと思ったのか雲の袖でそっと顔を隠した。
「ちょっ待っヒイィ嫌アァァやめてェェェェ誰か助けてー!!」
「アハハハハッ、いいぞいいぞ~ハァハァもっと叫ぶんだッ!!」
銃剣を持った兵隊さんの、唾を飛ばして目を血走らせて嗤う、滅多刺しにされないのが不思議なぐらい凶暴さ剥き出しの表情が景色を塞いでいる。もう駄目。門倉は天を仰ぎ思わず両手で顔を覆った。さようなら、俺の肛門。
「…………あれ?」
チンポの首を撮まれた、と思ったら頭の天辺に生微温い刺身だか団子の様なものが貼りつき、それが包むという表現では優し過ぎる圧縮を頭に齎して、お釈迦様が孫悟空の頭に填めた金の環となって門倉を脅かした。悸悸しながら少し首を起こして指の隙間から下肢を覗くと、頭を締め上げていた環はお釈迦様の、じゃなくて宇佐美の肛門であった。
「えー!!!そ、そっちなのぉ!?」
宇佐美が跨いでいるど真ん中にチンポが刺さっている。門倉がごくりと喉を鳴らして見詰める中、集めては緩緩と逃がす息の律に合わせて宇佐美が腰を落とす。頭を丸呑みにした肛門に胴がズブズブと没していく。そしてチンポは視界から完全に葬られた。
「フー……。ちょっとでも動いたら……。削ぎ落としちゃいますよ?」
「は、はい」
首かチンポか判らないがどっちにしろ悲惨な目に遭うのだけは解ったので大人しくしていると、膝を緩慢に伸ばしては曲げる宇佐美の金玉の裏で、チンポが長くなったり短くなったりと相手の如意にしか従わない無能な如意棒にされて嫐られている。ガチガチのビンビンに勃っている門倉には視覚的にも拷問であった。そっちに宇佐美の気が逸れているのでそーっと頭を寝かせて(首疲れた)、辛抱堪らんという風にァスーッ、ァスーッと深呼吸を繰り返して、星を数えお経も唱えてチンポが犯される快感と闘うのだった。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……チンポを根刮ぎ持っていかれそうだ、ちょっと褌で擦れるのがまた、うん、ケツも悪くないよね正直……南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……あっ、もしかして宇佐美が名器の持ち主なのかな?気持ちよくってもうね、地獄に堕ちるのかな、どうしよう、俺。
「……部長ッ、門倉部長ってば!聞いてるんですかッ、も……早くッぅ、動けっつってんでしょ切り落とされたいのかこのアバズレ!!」
撥!!!えー!理不尽過ぎる!!頬を、張り飛ばされた後に手で庇う仕草をしてしまうのは何故だろう。
「う、動いたら駄目なんじゃなかったの!?」
宇佐美は青筋が立ちそうなぐらい仁王の表情に変わって、門倉のちょっとだけ漏らした目を睨めつけ、喉仏に刃を水平に当てた。
「フー!フー!さっさと動けって言ってるのが、」
「わわわわかったから、う、動くと危ねえから、それどけて!」
右手で左の手首を掴んで銃剣を握った拳を体の脇に退けたが、怖いから離さずに自分の拳の甲ごと土の上に固定しておく。脚を開いて膝を立て、腰を土から剥がし、亀頭だけ中に残して浮いている肛門に竿を呑ませて吐かせる作業に集中する。奥まで突く度に撥と音がする。散々顔やら尻やら打たれた復讐の念も込めて、態と音が鳴る様に荒く粗く尻を恥骨で叩いた。
「ァッアッ、アッアッアァ、ハァハァ、ィイ、ィイ、アァぁアッくっ、口にッ…チンポ突っ…込みたいのに!!精子飲めアバズレッッアァ畜生フーッフーッ!!」
喘ぎながらえらく乱暴なことを言う。冗談じゃない、舐振らされたら俺の黒歴史がまた一頁……。
肛門を刺すチンポから離れ難いらしいのを幸い、門倉は上の口を死守しようと激しく腰を振って撥撥撥撥撥撥撥撥撥撥!!!これでもか、これでもかと滅多打ちにする。
「ィアッ、ヒッあ…ッアッあんッアッィイっア、ゥッ、きッ、気持ちいぃ、ァッ、ハァッ、ハァッ、お、おっさんのッチンポ擦るのッ、アッアァ、気持ちいいッ…!!」
「お、俺も!!アッ!アッ!アアッ!?」
あんまり気持ち良いもんだから、うっかり腰が震って突きながらに糊の様な随喜を吐瀉ってしまった。
やっちまった感が半端ない。
そっかぁ、俺、男でもイケるクチだったのかぁ……。
しかも宇佐美と……。
土に尻を搗いて肩で息をし、虚ろな気分に襲いまくられる門倉であった。
なのに腰の辺りが渋太く痙攣している。また勃ってきたではないか。どうなってんだ、おい。
宇佐美は下膊で躙って、閉じられずにいる、だらしない口に近寄り、自身も急いた息遣いで、唾液に湿る唇を被せてきた。窒息させる気か!などと非難がましく臆するくせに、潜り込まれたらフーフー言いながらも舌舌してしまう。もはや性感帯を蝕む誘惑にもう勝とうとも思っていない門倉であった。
離れていった宇佐美の顔が今度はそっと肩口に埋まる。
口膣を熾した息の片割れが耳孔に靄った。
「…………。ねえ……門倉部長、もっと……したいでしょ……?」
馴染みの女みたいな倦怠の匂う甘い囁きが鼓膜を通じて陰茎を沸かせた。宇佐美は穴の襞を内側に捲ってそれに吸い上げられる様な感覚を与えながら尻を紆らせ根元を引っ張り回した。門倉は俄に噴射したおっさんの自覚に彩めき立った。首を少しだけ捻って左の肩口に顎を寄せた。頬の内側に描かれた、走っている姿をした棒人間の黒子が少しだけ上を向いた。唇に靄が掛かる。
「……お前、とんでもねえ変態エロ坊やだったんだな……」
門倉は感心と驚嘆と嘆息とを混ぜて呟き、埋けたままの尻を鷲掴みにすると左右に穴を目一杯広げた。宇佐美は浮と微笑った。律動的な尻の上げ下げを、抱えた両手が揺盪って助ける。宇佐美の喘ぎ声がだんだん大きくなってくる。
「んッ、んッんっんッ、あッアっあっアァッ、ハァッ、はァ…ッ突いてッ…!」
宇佐美は門倉の頭を右腕に掻い込み五指で黒髪の鶏冠に獅噛みつき、左の頬に額を擦りつけて強請った。頼まれなくてもの事なのに、そんな欲しくて堪らないみたいに求められたら二本でも三本でも呉れてやりたくなるが持ち合わせがない。肉壁を蠢かせながら、上で待っている穴に、一本しかないもので何度も滅多突きを喰わせる。
「ァそッ、んな、ハァハァ突か、れッ、たらッ…あーッあッアっアーッ!!ッアッ、い、ッぃい、ハァハァ、イい、イイッ、ぃぃイクッ…イクぃィぃイッちゃうッ…!!」
「おじさんを、喜ばせる、悪い子はッ……さっさとイッちまえッ……!!」
「あァ、あァ…!!イッちゃう…ッ、イッちゃうぅぅ…!!ッあ!?ッ、…ぃぃィイくイくイくイくイクううぅゥぅぅぁぁぁあああ!!!」
蹲って体中を痙攣させ、射精して門倉の腹に唾棄する。肺と一緒に肛門も忙しなげに膨張と収縮を繰り返して挿れているものを揉み揉み、次第にぐったりしていく体を預かり尻を緩っさ揺っさしている下の門倉を終着まで誘導する。
鳩尾に鉄拳喰らった様な呻き声を聞きながら、宇佐美の体は吃逆を起こした様な反応をして肛門に新しい精液を蓄えた。無論、用済みになったチンポは外へ捨てる。
「はあ……。エカッター」
下で門倉が草臥れている最中、満足気に賢者タイムに浸っている宇佐美だったが、ふと用事を思い出して上半身を起こした。
「あ……そうだ。お金」
軍衣の左前を捲って内物入から財布を取り出そうとすると止められた。
「金はいいから」
「え?いいんですか?」
倍払うとは言ったが街娼は初買いで相場なんて知らない。しかし街娼が日銭を稼ぐのも儘ならぬことは知っていて、お金が必要に違いないという先入観に囚われていたから、予想外の申し出にきょとんとする。
尻の下敷きになっている海鼠が固くなって存在を主張しているのにふと気がつき、言わんとしている事を即理解した。
「……ああ、体で払えってことか」
何故か躊躇しながらこくりと頷く門倉を見たら、目の前でお気に入りの玩具が閃つかされた犬の様に追跡本能が甦った。おっさんには似合わない、そのよく解らない恥じらいの薄衣に噛みついて引き裂きたくなってきた。
「じゃあ僕のおちんちん触りながら、何して欲しいのか、アバズレ語で言ってみてください。あ、なるべくいやらしい感じでお願いします」
「…………。お前なあ……」
自分より宇佐美の方がアバズレの才能を遥かに凌いでいると思うが……まあこいつの変態嗜好なんぞ今に始まったことではない。門倉はどっこいしょとおっさんらしく鈍い仕草で起き上がった。左手で萎えた自分のものを扱きながら、右手を宇佐美の後ろに伸ばして縦廻しに潜らせた中指で己の濁汁に浸かった襞を弄る。ここは門倉には犬の首輪の様なもの、すっかり飼い馴らされてしまったチンポは奥に頭を擦りつけ甘えたい構ってちゃんと化している。今なら三遍回ってワンと鳴くのも屈辱ではない。何とでも強請ってやる。
「お前の涎塗れのいやらしいケツマンコで俺のチンポを思う存分虐めてくれ」
「うふ……。そんなに僕のケツマンコ好きなんですか?アバズレだなぁ」
「うん、まあ……金より好き」
なケツマンコに中指を挿れる。人差し指も挿れる。抜き差しする。指二本ぐらいではもう満足しなくなっているだろうに宇佐美の表情がしっとり婀娜めいてくる。真ん中の関節まで埋めて股を開き置いておくと精液が垂れてきた。肛門が吐と飛ばした精液も便乗して股まで滑滑に汚した指で掻き回すと、ニチャニチャ、クチョクチョ、双方好みの卑猥な音に誘われて、どちらからともなく似せた音を立てて口を吸い吸い、ハァハァ、フーフー、乱れてきた息の音を添えて舌を絡め合う。
宇佐美が後ろ手に、聳り立つチンポを強く握り締めた。門倉は指を抜いて割れ目を隠す縦廻しをぐいと脇に退けた。そして卑卑する淫らなケツマンコがチンポの先に接吻すると、声には出さずただいまと呟いた。
20201021